これは7年ちょっと前に書いたものです(ホームページに載せたものの再掲)。長くてくどいのですが、手を入れると別ものになってしまうのでこのまま掲載します。バスに乗るだけでこれほど大騒ぎという初々しさも感じられるのではないでしょうか(笑)。
たった7年の間にボゴタの公共交通事情はかなり変わってしまったのですが、どのように変わったかは次回、後編を載せたときに書きます。
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ひとりでバスに乗る(前)(99/12/11)
12月の前半の2週間だけですが、旅行社で働く日本人の方のお手伝いとして、仕事に行くことになりました。仕事に行くとなると、通勤しなくてはなりません。最初はタクシーで行ってみて、次いで行きだけバスにしてみたんですが、3日後くらいには行きも帰りもバスになりました。
バスだと、路線も料金も決まっているので、タクシーの運転手が遠回りしないかとか、渋滞に巻き込まれていたずらにメーターが上がらないかとかという心配をしなくてすみ、気分的には非常に楽です。
というわけで、コロンビアの地に初めて足を踏み入れてから4年、通算13か月のコロンビア生活を経て初めて、ひとりでバスに乗ることになりました。これまでは、夫ないしその他の親戚たちと一緒にしかバスに乗ったことがなかったのです。
バスに乗る場合の最大の問題は、どこでどのバスに乗ってどこで降りればいいかをきちんと把握しておかなければならないということです。最初に乗るときは、全く乗ったことのない路線だということもあり、夫にこれでもかというくらい細かく話を聞きました。
仕事場に行くには、途中でバスを乗り換えなくてはなりません。乗り換えのことを考えただけで、本当に大丈夫かなーという気が自分でもしましたが、乗り換えなくてはならないとなれば乗り換えるしかありません。
行くバスは、うちの近所の、広くもなく路面が穴だらけで雨が降ると川になり、拡幅計画だけは何年も前からあるらしい、いろんなバスがひっきりなしに通る幹線道路ではなく、そこから少し住宅地に入ったところで拾います。ボゴタのバスは、「こんなところも路線バスが?」と思うような住宅地の中の普通の道を通ってくることがあるので驚かされます。
バスを拾う地点は初めての場所ではなかったのですが、なにしろ特徴のない住宅地なので、初日は一生懸命通りの数を数えながら、緊張してそこに向かいました。
しかし大丈夫。たいてい、そこには誰かしらバスを待っている人がいるからです。いなくても、通りを見渡してバスが見えなかったことがないというくらい頻繁にバスが来ます。
ところで、バスには私の知る限り、三つの種類があります。バス(スペイン語読みするならブス)、ブセータ、コレクティーボです。バスとブセータの違いなど、人と一緒に乗るときは全く気にしていなかったのですが、夫の説によると、前部が出ているボンネットバスの形がバスで、前部が平らなのはブセータです。乗ってみると、ブセータの方がやや小型で、バスならばある後部の降り口がなく、乗った前部のドアから降ります。
何が来ても、そこを通るバスは私の目的地までは行くはずだから大丈夫、と言われ、気楽に来たバスに乗っていたのですが、通勤を始めて数日後に、「あそこのバスはたまにカレラ30で曲がるのがあるから、13って書いてあるのに乗らないとダメだよ」と言われました。早く言ってよね、そういうことは。幸い、今まで、30のバスに乗ったことはありませんが。
カレラは、市の東部を走るアンデス山脈と並行する形で、南北に延びる通り。東西に走る通りはカッジェと呼ばれ、どちらも基本的には数字で表されます。カレラは山のある東から、カッジェは南から始まって、だんだん数字が増えていきます。うちはカレラ69にあり、乗り換え場所はカレラ14のアベニダ・カラカス(カラカス通り)。かなり東に移動することになります。
ところでバス代、最近上がりました。バスの方は上がっていないのですが、ブセータの方が500ペソから550ペソに。均一料金なので、乗り換えない限り、どこまで行っても同じ値段です。バスの方は車両によってばらつきがあるのですが、一応、路線による決まりのようなものがあるらしく、私が朝乗る乗り換え前のバスはいつも450、乗り換えたあとのバスは700です。
バス代は乗るときに払うので、それ用の小銭を一応用意しておいた方が安心です。しかし、バスに乗る瞬間にはバスに乗ることに集中した方がいいでしょう。でないと、バスというのは人がステップに両足を乗せた瞬間に発車するものだということをうっかり忘れてしまうからです。私だけかもしれませんが。
ずっと前にも書いたような気がしますが、ステップを上がってすぐのところに、ぎりぎり回る回転扉のようなもの(膝の上ほどの高さ)があるので、そのあたりにつかまりつつ、バス代を払います。2000ペソ札なんかで払う人もけっこういますが、私はなるべく1000ペソ以下の硬貨で払うようにしています。
バスには直接関係ない話ですが、1000ペソ玉はけっこうくせものです。これには大量の偽造硬貨が出回っているらしく、ほとんどの人は、それを受け取った瞬間に詳細に調べます。大きなポイントはふたつあり、色(黄色っぽい色をしています)が均一であるかどうか、刻印がくっきりしているかどうかです。こういう背景があるため、店などで1000ペソ玉をいくつも出すと、いやな顔をされるというか、疑わしげに見られるので、あまりいくつも同時に出さない方が無難です。
ひとりでバスに乗るようになると、通りが数字で表されるのがどれだけありがたいことかを実感します。通りの建物のほとんどや交差点にはその通りの番号が出ているので、それに注意していることによって、自分の降りる場所が近づいてくることがわかるからです。
そしてバス通勤初日、私はブセータに乗って通りを数えつつ、カラカスが近づいてくるのを待っていました。カラカス自体は、市内でも珍しくバス停が作られていて、バスのレーンが別になっている通りなので見分けやすいのです。
私の受けた指示は、バスが右に曲がったら降りて、カラカスで次のバスに乗り換えるということでした。
通りの番号からしてそろそろかな、と思っていると、バスが広い通りを渡りました。ひょっとしてこれがカラカス、と思ったんですが、バスが通り過ぎたのでそのまま乗っていると、バスは次の通りを右に曲がりました。
そこは片側一車線で、明らかにカラカスではありません。しかしこのまま乗っていたら、どこまでも(おおげさ)南に連れていかれてしまうことは明白。
降りなくちゃー、と思っていたら、ちょうど何人かの人が降りようとしてバスが止まったので、すかさずその人たちの後ろから降りました。
降りてから、通りの表示を確認するとそこはカレラ13でした。実はこの時点で、私はカラカスが14だということを把握していなかったので、カラカスはどっちだろう、としばし考えました。まあなんとなく、降りてみようかなと思って山とは反対側に歩いたら、次の通りにすぐ、バス停が見えてほっとしました。
私は、バスがカラカスを曲がるものかと勝手に思っていたのですが、そうではなくて、曲がる通りとカラカスは別だったんですね。そして、初日に降りた地点はバスが曲がってからしばらく後だったんですが、曲がってすぐに慌てて降りるよりもしばらく待った方が正解だということがあとでわかりました。初日に降りた地点からは、バス停のある場所が近いからです。
さらに、ブセータでなくバスに乗った場合は、カラカスで曲がるんですねこれが。その時は乗り換え場所までの距離が短くなって楽なんですが、最初に乗る時点で、いつブセータが来ていつバスが来るか予測できないため、とりあえず来たのに乗っています。
さてカラカス。バス停といっても、屋根のある場所にいくつか「○○方面行き」などと大雑把に書いてあるだけです。そこに必ずバスが止まるわけでもなければ、そこでなければバスに乗ってはいけないわけでもありません。ただ、カラカスはとにかくバスの数が多いので、その場所だと目的のバスをつかまえやすいということはあるようです。
最終目的地はカレラ15(キンセ)。北方向にも10ブロック近く移動するためバスに乗ります。カレラ7または15方面と書かれた場所でしばらく待ちます。ひっきりなしにいろいろなバスが通り、中に15と書かれたのも何台かいるんですが、その頭についているKというのが気になります。カレラは Carreraで、本来ならCだからです。
しかし、それ以外に15らしいのが来ないので、意を決して1台を止め、乗り込みざま運転手に「かれらきんせっ?」と訊ねました。運転手が頷いたのでお金を払って中に進みます。運転手、「そこに書いてあるだろう」と思ったに違いないんですが。
この路線のバスは大変混んでいて、ほとんど座れたためしがないんですが、距離が短いので大丈夫。しかしそれよりも、後部から降りるために後ろに進んでいくのがなかなか大変です。
バスの中を移動する時の鉄則は、両手で身体を支えておくことです。いつ急ブレーキがかかるかわかりませんから。座席の背なり、天井の棒なりにつかまりながら移動します。
降りる地点が近づいたら、後部扉の上にあるボタンを押して降りることを知らせます。ボタンは非常に小さい上に、バスによってついている場所が微妙に違うため、「どこ?」と探すこともしばしば。
ボタンを押すと、たいていのバスは減速しながらドアを開けるので、ドアの向こうの路面が流れていくややスリリングな景色が楽しめますが、ちゃんと止まってから降りた方がいいことは言うまでもありません。
ずっと前に書いた通り、バスが信号待ちなどで止まっているときにボタンを押してドアを開けてもらって降りることもできますが、この場合はバスが内側の車線にいる可能性もあるので、隣の車線の車に十分注意します。
さて、これで職場には着いたんですが、行ったら帰らなくてはなりません。同じバスの反対方向に乗ってそのまま帰ればいいというわけにいかないのが奥の深いところ。
しかし長くなってきたので、その話はまた次回。
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