今年もブックフェア、Feria Internacional del Libro de Bogotá の季節がやってきました。といっても、去年は行ってない気がする。何より、以前は4月開催だったのに去年か一昨年から8月に変わりました。全然「ブックフェアの季節」じゃありません。4月は雨が多いかららしいですが、20回以上やってて(今年は23回目)今頃何を言っているのか。
今年は独立200年記念なので独立特集らしいのですが、昼頃思い立って行って、夫は夜から授業(仕事)なので2~3時間しかありません。とりあえず目当ての本を探すのみ。本を買うだけなら本屋でも買えますが、よっぽど売れている本を除けばどこにでもあるとは限りません。それに出版社から直接買えるのはなんだかわくわくします。ものによってはフェリア価格で買えたりするし。入場料は払うのですが、大人ひとり8000ペソのところ、新聞に割引券が付いていたので(新聞購読者カードを持っていないと使えません)二人8000ペソで入れました。

いつもの場所。出版社の並ぶパビリオンは2つあるようです。さくさく見るぞー。

エディシオネス・ベーはわりと垢抜けた本を扱っていて好きなんですが、今日の目当てはここじゃありません。素通り。人が少ないのは金曜の午後だからでしょう。

全国紙『El Tiempo』の親会社でもあるプラネタはスペイン系の大手出版社。いくつもいくつもブースを持っています。手前に日本画みたいな表紙が?

と思ったら川端康成でした。左が『伊豆の踊子』、右は『浅草紅団』でしょうか。読んだことないけど、アサクサって書いてあるし。ほかに大江健三郎もありました。ノーベル賞作家だからかな。

ここの目当ては Julio Ramón Ribeyro の『La palabradel mudo』(唖者の言葉)です。最近、短編が読みたいなと思っていたんですが、この人はペルーの短編の名手だそうなので(故人)買ってみました。日本でも3作ほど邦訳があるようなのですが、そのうち2作、「記章」 La insignia と「分身」 Doblaje はここに収録されています。
未発表作も集めた完全版らしく、2巻本。しかし1巻だけでも550ページくらいあるし、短編集なのでとりあえずこれだけ買いました。大手出版社の有名作家だから、2巻が欲しければ普通の本屋でも買えるでしょう。45000ペソでした。

夫はそのプラネタの別のブースでこんな本を買ってました。
Diana Marcela Rincón Urrutia の『Saliendo del infierno』(地獄からの脱出)です。拒食症を克服した女の子の体験記のようで、「20日で二刷」という帯びも付いているあたり、話題作らしい。少し前、新聞で紹介されていました。
拒食症の女の子の本とか20年くらい前にけっこう読んだなー。似たような内容の気はしますが、興味はあります。
これは200ページくらいの薄い本で、39000ペソの値札が付いていましたが、El Tiempo 購読者カードがあれば15%引き。しまった。さっきの店でもちゃんと見ておけば割り引きしてもらえたかもしれないのに。

夫の目当てはこれも新聞で見た Egon という本。
出版社はビジェガス・エディトーレスというところで、聞いたことないなーと思っていましたが、2軒目のプラネタのすぐそばにありました。
ふだんは写真集などを主に出している出版社のようで、私が聞いたことないと思ったのはそのせいみたいです。写真集とか、店頭で見ていいなと思ってもめったに買いませんからね。高いから。
目的の本はレジの横にタワーになっていました。
エピックファンタジーというのでしょうか。北欧っぽい場所を舞台にした古代ファンタジーのようです。
夫はファンタジーどころか普通の小説もほとんど読まない人ですが、興味を持ったのは著者の話題性のためらしい。
著者はコロンビア人ですが、チリの銀行で長く働いていた人だそうです。これは現在93歳になる彼の処女作。作品は26年かけて完成されたそうですが、本人には出版の意志はなく、彼の孫だったか大甥だったかが出版社を探したらしい。
これだけでもけっこう異色な上、この作者はコロンビアの60年代の活動家、カミロ・トーレス・レストレポの異父兄というのも話題性に一役買っています。
話題先行なのかどうなのかは読んでみればわかるでしょう。

分厚い。
2巻本ですがバラで買えないようになっています。67000ペソという値段にちょっと躊躇した夫ですが、結局購入。エゴンは主人公の名前みたいです。

中には、元は著者の手書きだったという地図と家系図まで。
おもしろそうではありますが、エピックファンタジーをなかなか読み進められない私……。指輪物語でさえ、ペーパーバックの3巻本を買ったものの1巻の半分で止まったままです。これはこの本と似た感じで3巻のペーパーバックが一つのケースに収まっていましたが、1巻を出してしばらく放置している間に膨張したらしく、ケースに入らなくなってしまいました。

ノルマも大手出版社。ミゲル・トーレスの『Paginas Quemadas』(燃やされたページ)というのを買おうかな~と思っていたんですが、実物を見るといかにも薄い。いや、それはこの前本屋で見たので知っていたんですが。本屋で39000ペソだったのがここでは35000ペソ。4000ペソ引きか……でも出版社も作者もメジャーだからまたどこかで買えるし。
と思い、別の本を探すことに。しかし歩いても歩いてもその出版社が見つからない。あまりメジャーではないのでブース出してないのかも……と思った頃に、やっと見つかりました。

カングレホ・エディトーレス。カングレホは蟹のこと。ここは数少ない、コロンビア純正の出版社です。大手はどこもスペイン系とかメキシコ系です。手前に積んである黄色い本はフリーダ・カーロの本のようでした。

これを買いました。
ドミニカ共和国の作家を集めたアンソロジー。これはなかなか本屋で探せないだろうと思って。
裝幀はきれいですが、中はいかにも「DTPで作ったのをそのまま印刷しました」って感じではあります。紙もやっぱりプラネタとかはいいのを使ってる気がする。でも貴重なコロンビアの出版社なので、いい本を出してくれる限りは応援しますよ。
出版社的にプチドミニカ祭をやっているらしく、「ドミニカの本3冊を買ってくれたらあとの2冊は割り引きしますよ」みたいなことを言われたんですが、そのうち1冊は既に持ってるし。とか思って「これでいいです……」と1冊だけ買ってきました。
正直、本はけっこう高いので、予定外の買い物はなかなかできません。
ドミニカ祭の発端はおそらく、その既に持っている、というか一応夫の本なんですが、ハイチに関する『Haití la tragedia』(ハイチ、その悲劇)という本が出版されたことだと思います。これはあの地震の直後に(元)駐コロンビアのドミニカ共和国大使、アンヘル・ロックワードがハイチの歴史などと地震のときの様子を描いたものを本にしたもので、この短編集の表紙にも「プロローグはアンヘル・ロックワード」と書いてあります。
なんかいろいろあってロックワード氏はその後駐コロンビア大使を辞任してしまったんですが、それはたぶん本とは関係ありません。
ロックワード氏はその後、小説みたいなのを書いたようで、これが今回勧められたもう1冊の本です。彼の後押しでドミニカ文学が紹介されつつあるのかも。
というわけで、また積ん読本が増えました。本棚ほしいー。
最近は数年前に買った『Los Peor』というコスタリカの作家の小説を読んでいます。